くらぶち草の会では先輩農家の元で1~2年の研修をし、その後独立してからも分からない事は何でもメンバー同士で情報共有をし、お互いに切磋琢磨しながら農業に取り組んでいます。
今回は、新規就農者と先輩新規就農者が座談会を開催しました。
実際に、新規就農者としてスタートしたメンバーの生の声をお届けします。
参加者: 和田(くらぶち草の会代表:1997年就農)鈴木(2002年就農)
南、下野(夫妻)、本村、岩﨑、平船、秋山(2011年~2022年就農)
町(2023年就農開始)
この1年を振り返ってどうでした? どんな失敗をしましたか?
秋山
研修で学んだことをそのままマネする1年でした。実際に自分たちで始めてみるとわからないこと、
迷うことも多かっです。まだキャベツが小さいかなあと思って出荷希望を控えめに出したら、
翌週しっかり大きくなっていて収穫が遅れてしまい、全ては収穫しきれませんでした。去年の反省をもとに、今年はああしよう、こうしようというアイデアが沢山あります。
平船
失敗は色々しましたよ(笑)。無理、無駄、ムラが多かったかなあ。とくに、時間的な段取りが難しかったです。研修で経験していない栽培品目で、想定以上に時間のかかる作業があって、当初の計画通りに他の作業が進みませんでした。結局、全て収穫しきれなくて悔しかったなあ。
南
自分も段取りの計画を立てるのが苦手。自分はやりたい作業を先にやってしまうが、妻の方が段取りや作業の優先順位を判断するのが上手。妻の意見に従って、収穫しないで畑の片付けや次作の準備の作業をする日を決めてうまくいくようになりました。
色々と妻に助けられています。
鈴木
うちの連れ合いも、農業始めてからだんだん強くなったなあ。(笑)
そういえば、昨年から奥さんと一緒に二人で働くことになった下野くんはこの1年振り返ってどうでしたか?
下野
21歳の時に誰も知らない土地に一人で倉渕に来て研修を経て就農。今は結婚して二人で農業をするようになりました。
最初は土づくりや畑の準備をして、収穫して、出荷して、仕事以外に生活に関わる家事も多かったので精神的にも大変でした。結婚して二人になると精神的にも仕事面も楽になりました。
鈴木 役割分担は?
下野
とりあえず一年目は慣れるために、今までの経営スタイルがあるので昨年は同じように二人でやりました。
秋山
自分たちは妻と一緒にやってみて、得意な方が担当しました。自分はインゲンを収穫するのが遅い。
指先が不器用なんですよ。収穫は妻に任せて別の作業を自分が担当しました。作物の成長予測も妻の方が経験値が高くて上手。でもこの辺は自分も力を付けていかないとなあと思っています。
本村
今年で4年目を迎えます。3年目になると作業が早くなって仕事が楽になってきました。もちろん課題もあります。早い時期(10月)に出荷するニンジンの発芽を揃えるのが難しいとか。
南
うちは潅水ができる畑でしかニンジンはやらないことにしたよ。ニンジンはちゃんと発芽してくれるかが一番の気掛かりじゃないですか。
鈴木
小学校の課外授業で小学3年生とニンジン収穫体験をやっているので、小学校の近くの畑に毎年蒔いているけど、天気予報を見て雨の前日に蒔いても、ほとんど降らないで終わったりすると、ちょっと悲しいよね。
くらぶち草の会の一員となって良かったことは?
平船
独りぼっちにならない安心感。栽培技術やわからないことが先輩にすぐに聞きにいけます。
本やネットより近くの先輩から得られる情報が一番納得できます。
設備や機材などのハード面よりも、仲間の繋がりというソフト面の方が重要だと実感しました。
秋山
新規就農の先輩の多さ。皆さん長く農業を続けて生活することができていて、地域にも受け入れられている。倉渕には続けていける理由があるんだと思います。
本村
一言で言うなら手取り足取り。
畑を紹介してくれて、家も見つけてくれて、技術も教えてくれて・・・。
誰も知らない土地で、ひとりで始めても畑を探すことすら簡単なことではないですから。
鈴木
昨年研修を終えて、今年から出荷を始める町さんはどうですか?
町
サラリーマン時代に2年くらい、くらぶち草の会代表の和田さんのところに週末に通ってい。ました
自分にも出来そうかどうかの適性を探るのに時間をかけました。
いざ研修となると仕事量も増えて大変さもありましたが、時間的にも体力的にも自分がこなせる作業量の見当もつきました。何よりも一定の価格で販売できる販路が確保されていることがありがたい。
経験もないところから販路を開拓するのはとても難しいと思う。
南
自分は倉渕で農業を始めたのは2011年。くらぶち草の会に2017年に入会してから土づくりや
堆肥づくり、施肥設計などが詳しく学べて栽培技術が向上したなあと思う。
鈴木 倉渕町は住みやすいですか?
下野(妻)
住みやすいですよ。ほどよく田舎、ほどよく便利(=ほどよく不便?)です。
車ですぐに高崎市街地に出られるし、慣れるとそんなに不便は感じない。
自然が多く山に囲まれているけどそこまで山奥ではない。私の場合は、実家の埼玉からもそんなに遠くないから何かあった時でも安心。
鈴木
テレビのチャンネルは東京と同じだしね。自分も引っ越してきたときは近所のばあちゃんから
『なんでこんななんもないところに来たんかね?』って聞かれた。『なんもないから来たんよー。』
って答えてた。
下野
実際に東京の実家に住んでいたころは、便利ではあるけど、隣近所が近すぎて、声や物音など人の目を気にする生活でした。今はそういう事を気にしないで生活が出来る。買い物などは目の前になくても、近くにコンビニもあるし、車で30分移動すれば、大体のものはまとめ買い出来る。
岩﨑
そうだよね。市街地に出ればイオンとか色々な店もあるから不便に感じない。運転するのが好きならもっと楽しいですよ。温泉も近所にあるし。草津や伊香保なども大体1時間くらいで行けますし。
鈴木
住めば都って感じだよね。程よい距離感。 地元の人との付き合いはどうですか?
本村
よそ者が入りやすい環境。近隣の方からも受け入れてもらえる土台ができています。
岩崎 地域のちょっとした役割が順番で回ってくるけど、そういうのでも地域の人との繋がりが深まります。
南
田舎あるあるだけど、ご近所の冠婚葬祭で地元の人とはぐっとお近づきになれます。
鈴木 ちょっと不便だなあと思うことは?
秋山
こどもが小さいので病院が20㎞以上離れていることは心配かな。あとは仕方ないけど少子高齢化。
鈴木
確かにね。でも俺も子育てして病院連れてったけど、毎日じゃないからどうにかなったし、高校は隣町に行かないと無いけど、町内には幼稚園と保育園、小学校、中学校はあるから、助かったよね。
小学校の場合は、家からバス停が一定以上遠いと、タクシーが家まで送迎もしてくれたから、すごく助かった。
支援制度は役立っていますか?
町
国の支援制度のほかに高崎市から新規就農者への支援制度がある。高崎市の支援制度は年齢制限がないので自分も受けられました。育苗用のハウスや資材などを購入出来たので大変助かりました。
平船
自分も獣害対策用の畑を囲むように張り巡らす電熱線の購入などに充てられたので良かったです。
本村
最初の2年間、一軒家で作業場もある市営の研修棟に住めるから、家がすぐに見つからなくても安心で、大変ありがたかった。
下野
国の支援制度があったからこそ、金額は多くはないが農業や生活の足しにはなりました。
貰う分、手続きも勿論あるが、あって良かった。
今年取り組みたいことは?
岩崎
手作りの微生物資材を試す計画です。色々効果があるようだが特に病害対策を期待しています。
県内のヨーグルト工場で出る乳清(ヨーグルトの上にできる液体)に納豆やイースト菌などを加えて発酵させた微生物資材を制作中。仲間の皆と試したいです。
和田
VDFの共同使用を仲間に呼びかけていきたい。VDFとは、ベジタブル・ディーゼル・フュエルの略で、天ぷら油等の廃食油から作られたディーゼルオイル。 以前もトラクターの燃料として使用していた。大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)の排出ゼロ。黒鉛の排出も軽油の1/2以下と地球環境にも優しい。
鈴木
トラクターに乗っていると、とにかくめっちゃいい匂いでおなかが空いてくるよ。(笑)
本日は、ありがとうございました。
さあ、今年もみんなで美味しい野菜作りを目指して頑張りましょう。
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いかがだったでしょうか?今回は新規就農者だからこそ感じる苦労や実体験を本音で語り合いました。
就農するのに当たり、金銭面や移住環境への心配は必ずあります。
しかし、くらぶち草の会では同じ道を通ってきた多くの新規就農者の先輩がいるため、相談しやすい環境が整っています。
農業に興味のある皆様にも、くらぶち草の会にぜひ体験にお越しいただき、参考になれば良いと思います。